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外相のサウジ・オマーン訪問、日本の原油「中東94%」をどう読むか

・ 約6分で読めます ・ 文責: 世界情勢と市場ノート編集部
目次
  1. 導入
  2. 一次情報で分かること
  3. データの読み方
  4. 分からないこと
  5. まとめ
  6. 参照元一覧

導入

外務省は2026年8月14日、茂木外務大臣が8月17日から22日までサウジアラビアとオマーンを訪問すると発表しました。現地では両国と、サウジアラビアに所在するイエメン正統政府の要人に会い、中東情勢の沈静化、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の自由で安全な航行、二国間関係の強化について意見交換する予定です(外務省、2026年8月14日:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/pressit_000001_04054.html)。

これは外交日程のニュースですが、日本の暮らしから遠い話ではありません。日本は原油のほぼ全量を海外に頼り、特に中東とホルムズ海峡への依存が高いからです。訪問の意味を考えるには、会談予定と、実際の輸入量、備蓄を分けて見る必要があります。

なお、2026年8月15日は香川県知事選挙の選挙期間中です。同選挙は8月13日告示、30日投開票です(丸亀市選挙管理委員会、2026年8月15日確認:https://www.city.marugame.lg.jp/page/44485.html)。本稿は候補者や政党を評価せず、外交日程と公表データだけを扱います。

一次情報で分かること

まず平時に近い年間データです。資源エネルギー庁によると、2025年の日本の原油輸入量は日量約236万バレルでした。輸入先の中東依存度は94.0%、ホルムズ海峡を通る原油への依存度は93.0%です。国別ではアラブ首長国連邦が43.3%、サウジアラビアが39.4%、オマーンが1.0%でした(資源エネルギー庁、2026年6月資料、データは2025年:https://www.enecho.meti.go.jp/category/resources_and_fuel/distribution/sskasochi/ryutsukenkyukai/04/01.pdf)。

今回の訪問先であるサウジアラビアとオマーンを足すと40.4%です。2025年には、日本が輸入した原油の約4割がこの2か国から来ていた計算になります。ただし、これは2025年の年間構成であり、訪問によって新たな供給が決まったことを意味しません。

次に、供給不安が続いた後の月次データを見ます。2026年5月の原油輸入量は729万klで、前年同月の61.6%でした。国別ではUAE322万kl、サウジアラビア203万kl、米国163万kl、オマーン13万kl、ロシア12万klです。中東依存度は73.9%で、前年同月より16.6ポイント低下しました(資源エネルギー庁「石油統計速報」2026年5月分、6月30日公表:https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/sekiyuso/result.html)。

サウジアラビアとオマーンの合計216万klは、5月の総輸入量の29.6%です。中東比率は下がりましたが、総輸入量も前年を大きく下回っています。「依存度が下がった」ことと「供給に余裕がある」ことは同じではありません。

データの読み方

政府は輸入減への対応として備蓄を使っています。資源エネルギー庁の2026年6月資料では、3月16日に民間備蓄15日分の活用と当面1か月分の国家備蓄原油の放出などを決定し、5月1日からは第2弾として約20日分の国家備蓄放出を始めたとしています。6月の代替調達見通しは、それまでの7割以上から8割程度へ引き上げられました(2026年6月:https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/2026/071/071_004.pdf)。

4月末時点の備蓄は、製品換算で5,929万kl、石油備蓄法基準で210日分でした。内訳は国家備蓄126日分、民間備蓄84日分、産油国共同備蓄1日分です。内数と合計が一致しないのは四捨五入によるものです。同じ在庫をIEA基準で計算すると179日分になります(資源エネルギー庁「石油備蓄の現況」、2026年4月末時点・6月公表:https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/petroleum_and_lpgas/pl001/pdf/2026/260615oil.pdf)。

「210日分」は大きな数字ですが、210日間の需要をどんな状況でも無条件に満たせるという意味ではありません。日数は国内消費量を基にした換算値です。実際の供給には、必要な油種、製油所の処理能力、港やタンカーの稼働、各地への配送も関わります。また、備蓄放出は在庫を使う措置なので、供給路が安定した後には補充の判断も必要になります。

分からないこと

外務省の発表から分かるのは、訪問先、日程、協議予定です。原油の追加供給量、価格、契約期間、航行量、共同文書の内容はまだ示されていません。そのため、「訪問で原油供給が安定する」と結論づけることはできません。

月次統計にも時間差があります。8月15日時点で確認できる国別輸入の速報は5月分です。外交協議の結果が実際の船積みや輸入統計に表れるまでには、さらに時間がかかる可能性があります。

今後の確認点は三つです。第一に、訪問後の共同発表に航行安全やエネルギー供給の具体策が入るか。第二に、月次の原油輸入量と中東・ホルムズ依存度がどう動くか。第三に、国家・民間・産油国共同備蓄の残高と補充方針です。会談の言葉だけでなく、後から出る数量で確かめることが重要です。

まとめ

今回の外相訪問は、2025年に日本の原油輸入の40.4%を占めた2か国を訪ね、二つの重要海峡の安全航行を協議する予定という点で、日本のエネルギー安全保障に直結する日程です。一方、2026年5月は原油輸入量が前年同月の61.6%に減り、備蓄放出と代替調達で対応している途中でした。

現時点で確認できるのは、「重要な協議が予定されている」ことまでです。評価は、訪問後の合意内容、国別輸入量、備蓄残高という三つのデータがそろってから行う必要があります。

参照元一覧

本記事は公開データに基づく解説であり、特定の政党・候補者への支持を示すものではありません